++2005/05/31(火)  脱げていました
 →6月の日記はこちら
        
 タバコ臭い渋谷・道玄坂のマクドにて、隣席の会話が耳に流れ込む。
          
男A:「おれら、もう実際今年で27なわけじゃん」
男B:「おまえ、就職どうすんの」
男A:「いちおー知り合いの事務所で仕事することになったんだけどね」
男B:「ああ、例のデザイン事務所か」
男A:「そうそう。マック使えるじゃん、おれ。時給2,000円で雇ってくれるんだって。チョーよくねえ?」
男B:「時給? バイトなの」
男A:「最初はね。でもすぐに正社員登用してくれるって言ってた。他のスタッフも若いしさ、遊び感覚で仕事してて、事務所もチョーおしゃれだし、いーかなと思ってさ」
男B:「そうかあ」
男A:「それに、今って、若い事務所にもぐりこんどけば、若いうちに部長とかになれんじゃん」
男B:「そうなの」
男A:「ライブドアとか、そうじゃん。それに、俺のまわりに普通の大きい会社に就職したやついっぱいいるけど、部長になれてるやつって、ひとりもいないぜ? 大きな会社って年寄りが居座ってるから、若い人間は待遇が悪いんだよね」
男B:「おまえ、そういう事情にくわしいよなあ」
       
男B:「そうそう、オレも、就職の説明は聞きにいったんだけどさ」
男A:「まじで? なんの会社? あのネットで見つけたやつか」
男B:「そう」
男A:「会社に直接行ったの」
男B:「行ったよ。で、面接の手順とか、そういうの聞いてきた」
男A:「へえ。それで、どうだった、雇ってくれそうなの」
男B:「それがよくわかんねえんだよな。もう1回聞いてみようかなあ」
男A:「ああ、電話番号わかんだろ。電話して聞いてみろよ」
男B:「そうだな。よし、いま電話する……なあ、なんて聞けばいいんだ?」
男A:「先日就職の件でおうかがいした○○と申しますが、就職について確認したいことがありまして電話しました、って言えばいいんだよ。そしたら担当者が出てくるからよ」
男B:「おまえ、すげえな。よし、電話する」
       
男B:「アッもしもし、あのー先日就職の件でうかがった男Bというものですが……ハイ……ア、もしもし、担当の方ですか。あのー先日就職の件でうかがった男Bですけど……ア、どもっすー。確認したいことがあって電話したんですけど、ハイ。あの、面接っていうのは、いつしていただけるんですか……ハイ、ハイ、ハア、じゃあ先に履歴書を郵送すればいいんですね……ハイ、ア、わかりました。じゃあ、先に履歴書を郵送して、それで合格すれば、面接ができるってことなんですね……ハイ、ア、面接で作文とか出すんですか。じゃあ作文は履歴書が合格してから書いたらいいってことですよね……そうですか、ハイ、わかりました。ハイ、ありがとございっしたー」
       
男A:「なんて言ってた」
男B:「履歴書を郵送して、それで合格してたら、面接の案内が来るんだって。で、作文とかのテストがあって、それで合格したら就職だって」
男A:「めんどくせえなー。でも、がんばれよ」
男B:「おう。でも作文とかってほんとめんどくせえよなー」
男A:「な。めんどくせーよ。仕事内容って、どんな感じなの」
男B:「あー、なんか、パソコンでメールのやりとりする仕事だって。事務所いったら、パソコンがむちゃくちゃ並んでてよ、バイトだと思うんだけど、オッサンとか女の子とかがカチャカチャメールのやりとりしてんだよな」
男A:「へえ、ITじゃん。がんばれよ」
男B:「ああ、タバコも吸い放題だったし、よさげだったからな」
       
 男Bよ、おそらくそこ、出会い系サイトのサクラ会社だから。
 男Aよ、部長になれるかどうかは会社でなくて、キミの資質だから。
 そんな会話を盗み聞きながら、絵日記つけてみたり。

 きょうはカレと渋谷でデート。人気のローライズパンツでSEXYにチラ見せ★
 しかし、椅子に座ることによって、見せているというよりむしろ“脱げている”状態になってしまったカノジョなのであった。色白の肌と添えた左手が、なんだか妙に、事件性をかもしだしていた。パンツをはいている様子はなかった。
          
 そして私はこのようにして、ワカモノの街・渋谷をしっかり満喫することができたのであった。
       
 ⇒ 占い師への道 3で、ゴザイマショー。



++2005/05/30(月)  そんなんばっかり……
 LUCiで本を紹介してもらえたのはとても嬉しかったんだけど、見てみたら、著者名がまちがってるのだった。がくっ。私はあっ、泉美木蘭っていうんですよおおおっ!
 そんな最近はドタバタつづき、傷心じゃなくて焼身ぎみなり。ここんとこやってた仕事が
・家にこもってひたすらにメールの返信とファイルの送信
・家にこもってひたすらにバイセクシャルの本読みあさり
・家にこもってひたすらに裏稼業について調査
・家にこもってひたすらにパチンコ業について調査
 そら、息もつまって、うつ病に片足つっこんだとしてもおかしくないっちゅうやつである。
 ――私にお日様の光を!
 とか思ったんだけど、うつ病啓発CMの木村多江にやさしく『いつから……我慢してるんですか?』と呼びかけられても
「ん〜、今日の朝起きたときから? めんどくさくて寝巻きのまま仕事してます」
 としか回答できず、さらに『毎日気分が落ち込む。』『何をしても楽しくない。』などのうつ諸症状を見ても、ああ、女装浣腸男のホームページに心躍らせ盛りあがり、「すごっ、うわ、すっごいねえ!」と会話に花を咲かせてる時点で、私はちっとも「うつ」じゃないのさ、と思ふ。
 結局、ただのめんどくさがりから来る“五月病なんですよと言い訳したい病”“できれば病気ということで世間から大目に見られたい病”みたいなもんであり、そんな我が身の、それはそれは飴ちゃんのような甘さをふり返り、ちょっとため息ついたのであった。
        
 しかしそれでも気分転換にと、本日は大雨のなか渋谷の美容室へ髪切りにいく。ん〜! いつも思うけど、担当してくださる美容師さん、オサレでイケメンやなあ〜。もっと顔に髪の切りクズをふりかけてほしい、そして「あっ、すいません」と言いながら指でササッと払ってほしい(立派なセクハラ女である)。
 帰りに映画を観ていこうと思ったんだけど、お目当ての映画をやってるシネセゾンという映画館がどこにあるのだかわからず。携帯でインターネット接続、GPS機能にて目的地をナビるという文明の使いこなしっぷりにも関わらず、たどり着けないこの天然方向音痴さ具合よ……ていうか渋谷って、シネセゾン、シネパレス、シネクイント、シネフロント、シネアミューズにシネラセット……死ね死ね死ね死ねって、死ねな映画館が多すぎなんだってばあああッ! くっそう。
 結局、ほぼスタート地点に近い場所に目的のシネセゾンはあった、むしろスタート地点すぎてナビが表現しきれなかった、という事実は発覚したものの、肝心な上映時間は微妙な感じ。あきらめて次回ということでトボトボと帰宅したのであった。ぐあー、なんんんか、酒飲みてえええー。
                
「あっ、もみじさん、ダメだって!」
    
 観葉植物、はじめました。100円均一で購入したのは、やたら卑猥な豆の木(欲求不満・写真左)と、やたら横に幅とってはびこりそうな予感のミリオンハート(さっそく折れる・写真右)。さて、、、とりあえず、「すぐ枯らす」に5000点。




++2005/05/26(木)  日記らしい
 変な時間に寝て起きて仕事して、また変な時間に仮眠して起きて浜松町へ。夜も8時という遅めな時間から、週刊SPA!編集部に討ち入り! といってもツテで紹介していただいてのことで、非常に低姿勢な「あ、あのそのどのあのコココンニチハぁ」。
 ――う、うわあ……この、疲労と知性の入り混じったマイルドな殺伐感、就業時刻感覚の完全麻痺具合、そして雑多でタバコ臭香る忙しそうなっていうか“見りゃわかんだろマジはんぱねえ忙しいんだよ!”の人々がもんのすごくたくさんいらっしゃるダダッぴろい空間。そ、捜査一課の対策本部みたいで、こわいー! だけど、みなさんとてもやさしかった。忙殺のあいさに、こないな田舎モンの話に耳かす時間を割いてもろうて、えろう幸せなこってすにい。
「お母さん、きょうも木蘭は100円玉をひろうたよ」
 そんな感じで帰り道、しこたま道に迷う。え、えと……入ってくる時に見た看板があすこにあるから、このまままっすぐ歩いて……え、えと、えと、エ? ん、と……がああああああん! 駅がない、駅がない、しかも人気がすくなくて、なんだか潮風吹きはじめたよおおおっ。結局1時間ほど狼狽の徘徊の涙・涙で通った道をじゅんぐりめぐり。ようやっと発見した「JR浜松町」という緑色の看板を見た瞬間は、マジで本気で涙がほほを伝ったのであった。千鳥足のサラリーマンに何事かと顔を見つめられつつ……呪え! 方向音痴を。
 やっとこさの思いで帰宅したら電話が鳴ってるのでとる。したら、思いっきり無言電話。母親かと思って急ぎかけなおすと
「あんぎゃ、ぎゃにゃじゃなりろ(いんや、かけてないよ)」
 むちゃくちゃ寝てて、ス、スンマセン……。
 嗚呼、無言電話。なんだか久しぶりに不気味体験のヨ・カ・ン♪



++2005/05/25(水)  おやすみの午前5時
 占い師の話のつづきは、溺愛している友の話でもあり、やっぱ、でら長くなりそうなので「ヒットラーハガキはもういらない」に移動することに。どうぞおひまでしたらカマンベエル。
 おっふう、疲れた。最近は午前中に1回、夕刻に1回みたいな妙な時間で寝てるので、なにやらちょっと頭痛気味。明日は営業で浜松町に討ち入り。がんばるベアー。



++2005/05/22(日)  ジャイアン的脅迫愛にご注意を
 ちゃらり〜、鼻からザ〜メ〜ン!
 髪をわしづかまれながらの激しいフェラチオが好きだからといって、あんまり奥まったところで発射されると精液は鼻腔を逆流、咳込んだ瞬間、ぶッ! なんと両の鼻の穴から勢いよく飛び出してしまうのである。あーおどろいた。だけど、がんばれば目から一匹づつ精子を飛ばすという芸も可能かもしれない。ミルクマン・レディース。電撃ネットワークもたじたじだ!
 さて。
 そんな冗談はさておきッドッドッドドドーーーン! きやあああん!
 いつものように私が部屋にこもってぱちぱちキーボードを叩いていると、風呂場のほうから大きな物音と、飼い猫もみじさん(2)の悲鳴のような鳴き声。あわてて椅子を蹴り飛ばし、なにごとかと風呂場へ駆け込む。と、そこには空っぽの浴槽に顔をつっぷしうずくまり、ピクリとも動かぬもみじさんの姿……エッ、チョ、どどどうしたのっ!
「も、みじ……?」
 呼びかけてみるも、顔をつっぷしたまま耳も動かさない。おいおいおいおい、なに、すべって浴槽のへりから落ちたの? 頭でも打ったの? もしかして重症っ!? ね、ねえ、ちょっとおおおおお!! おそるおそる手をのばし、背中をゆすって抱き上げてみた。と。
『ドッキリ! マルヒほおこくうう〜!』
 グルにゃああああん♪ なんともみじさん、待ってましたとばかりに体をくるりと反転。通常の2倍増しにキラキラと輝くいたずらな瞳をこちらへ向けると、クネクネとお尻をよじらせながら腹を見せ、大胆な“お誘い”のポーズを披露しはじめるではないかい。
 てめっ……死んだふりかよおおおおお! なんなんだよお、わざとらしく物音たてて悲鳴まであげやがって、びっぐりずんじゃねえがああっ! でも、かわいいので
「ン〜、かまってほしかったんだねえ、よちよち、もふもふしてあげるう♪」
 浴槽内を毛だらけにして、しこたま愛を確かめ合うと、私はもみじさんを抱き上げ自室へ。そのままひざの上に乗せ、時折ちゅっちゅしながらその日は仕事を続けたのであった。
 それが、はじまりだった。
 以降、私がキーボード叩きに没頭していたり、もう一猫の飼い猫ナポリくんとあま〜い猫パンチごっこ(※)などをたしなみ、なごんだりしていると、決まって風呂場のほうから例の物音ともみじさんの悲鳴が聞こえ、行ってみれば同じく死んだふりをして待ちかまえられているようになってしまったのである。
 いちいち反応するのも面倒になったので、無視を決めこむようにはしていたのだが、相手もなかなかのしつこさ。ドキッとするような弱々しい声でSOSを求める鳴き方をしてみたり、鳴き声を徐々にフェードアウトさせてみたり、激しい物音を何度かたてたのち、ふと静かになってその後何度呼んでも返事ひとつしなくなってみたり。そら、こっちも「もしかしたら」というのもあれば、「愛情が偏ってるとみなされてグレたらまずい」とか、いろいろ考えてしまって、結局、ため息をつきながらも様子を見にいくことになっちまうんである。
 この女、さすがメス猫。
 人の心理を巧みにあやつり、隙間をつつく、この攻撃。
 ウーン、人間にもいるんだよねえ、よく似た手口で相手を縛りつける人。
 『私だけを見てて、そして私も私だけを見てるから』
 『あなたの愛は私のもの、私の愛は私のもの』

 ってえのがこの手の人の基本形。さしずめ、ジャイアン的脅迫愛とでもいいますの? 手段選ばずと見せかけて、実は一辺倒に自分を見せつけることしか知らないゆがんだ愛の形。直接的に口には出さずとも、結果的に言動がそうなってる人って多いですよ。女だけじゃないですよ、男にもいますよこういうの。
 面倒だからと無視すりゃー、わざとらしく自分自身を責めるようなこと言ってみたりしてさ、必要以上にボロボロになった(というか、した)姿を、相手の異性や周囲の人間に見せつけることで注目を得ようとしたりしてさ。そして思い通りにならないと、ひどい場合は「旅に出る」とか「死にたい」とか無謀なこと言い出して、相手の人間を恐怖に陥れるわけね。
 こういう人は自分しか見てないから、相手に与えるダメージがいかほどなのかがまったくわかってない。反省が身につかないってえか、いくら親身に話を聞いても、結局、自分のことなんか省みりゃしない。すべては周りへの押し付け、周りの責任。だから卑怯なことが平気でできるんだろうけどさ。人間、注目を浴びる手段は、ひとつじゃないのにね。
 てえなことに思いを馳せたりしていたら、当のもみじさんはさほどジャイアンではなかったらしく、ていうか飽きてしまったらしく、私のほうから「も・み・じ♪」とすりよって行っても、めんどくさそ〜な顔でチラ見するだけ。猫パンチごっこの相手もしてくれなくなってしまったのであった。
 つれないなあ、もーちょっとぐらい、迷惑かけてちょうだいよおおおん!
      
※ 説明しよう。猫パンチごっことは、寝ている猫の顔をやさしく執拗にグーでぐりぐりし「もう、なんだよおお」と猫パンチで応酬してくるまで楽しんだあと、今度はふりあげられた前足の肉球をポムポムッと執拗に指でつまむという、猫にとっては迷惑極まりない人間サイドの勝手な遊びである。我が家ではナポリくんのほうが露骨にイヤな顔をするのでおもしろい。ただし、やりすぎるとツメが出るので要注意だ。



++2005/05/20(金)  そのパンツ、ワゴンにもどすべからず。
 はじめての印税で、最初に買ったものは、ワゴンセールのパンツでした。
 お金をおろしてまず入ったのが近所の衣料品スーパーで、980円の品がナンタールヤ、出血価格の190円! に値下げされてんだもの、しょーがナーイ。
 そらもう血まなこで駆けつけ、パンツコパンツほじくりたおし。隣のおばはん、ひじ張りたおし。でも一番食らったのは、そのおばはんが選んだパンツをその場で自分のまたぐらにあてがい、ちょっとしたフィッティングをこころみていたということだった。ワゴンの脇で。ガニマタさらして。色はピンクで綿パンだった。ダイジョーブ、似合ってるぜッ! グッ!
 ……って、おいおーい! そのパンツ、ワゴンにもどすなってええええっ!
 白から黒から赤から黄から。次々とあてがっては自分のまたぐらをのぞきこみ、首をかしげてワゴンにポイポイパンツをほり込むこのおばはん。まるで勝てる気がしないのである。
 しかし、ここが大阪ならばいざ知らず、横浜にもこういうおばはんって存在するんだなあ。この繁殖力には感心しきり。こういう人が発している何らかの熱エネルギーをよせ集めれば、夏の電力不足もラクラク乗り切ることができるにちがいない。おばはんワゴンセール発電。ちょっと白粉臭が漂います。
 とか思ってる間に、結局おばはんはパンツは全部やめて、隣のワゴンに同じく積まれているビニール個包装済みの失禁ズロースみたいなやつを2パック、レジへと持ち運んでいったのであった。フィッティングの意味、まったくもって、ナッシング!
      
 そんな最近は、仕事のうちで毎日ぐるぐる歩きまわってたんだけど、ついに、ついに、うあああーん!
 そもそも、昨年一年間のほとんどを机の前に座って過ごし、股関節が硬くなって正常位に支障をきたすようになったがために自らすすんで騎乗位上手になったような人間が、急に毎日おもてを歩きまわるほどの体力を持ち合わせているわけがないというこの状態。だましだまし歩きつづけているうち、どんな心理状態に陥るかというと
 まず、靴とか履くのがいやになった。
 次に、「せっかく歩いてるのに信号が赤」ということにイラつきをおぼえはじめた。
 さらに、「道が硬い」という部分でキレはじめた。
 そして、右足と左足を交互にふりあげる動作がしちめんどくさいと感じるようになった。
 最後は、周囲の目も気にせずそこら辺にへにゃくり倒れたい衝動に駆られるほど、途方に暮れた。
 ……心もポッキリ折れまくり。無洗米を炊く元気すらなくして、あたしゃやさぐれカップラーメン人さ。やさしくされたいよ。
 歩くことで健康を取りもどせるのかもしらん、と思っていたら、あーこりゃこりゃ、心が不健康になっとるではないかい! 私がバカだった。とか、愚痴ってる私もバカなのだった。さ、しばらく家にこもって、枕でも濡らそうっと。再来週、お誕生日なのよ。28歳の!



++2005/05/11(水)  四畳半の隅っこで、カッパを想う
 ヒドイ……Eメールのばかあ。電子連絡不行き届きにて先方様から放置ていうかむしろコノヤローと思われてたことが発覚。連絡を無視するなんつう余裕ぶっこいた女じゃないのにっ……もはやイジケをこえて、やさぐれ。グンゼのランニングを着て一升瓶かかえて、四畳半の隅っこで「ひどいです」と返信してから、やさぐれなんである。
 はあ。もう、Eメールこわい。だいたい、日々私が送信してるメールだって、無事先方に届いてるのかどうか保証がないんだものな。そんな中、気を取り直してみようと鳥肌実のホームページを眺めていたら、ポチッとボタンを押した瞬間
「貧乏不遇欲情空腹、貧乏不遇欲情空腹、貧乏不遇欲情空腹……」
 スピーカーから、まこと恐ろしいエンドレスな鳥肌経文が流れ出し、のーーーーーっ!! Eメールのみならず、もう、なんか、インターネットが、全体的に、私をいじめるんだ。
 これからは、携帯のメールもパソコンのメールも送信・受信ともに信用ならんので、住所および電話番号、そして郵便番号まで記載した署名をつけてやりとりすることにした! (←結局メールである上、そんなもん元々知ってる人とのやりとりがほとんどなので、あまり意味がない)
 そうだ。やさぐれついでに……
     
 思いっきりいうけど、私は、カッパを見たことがある。
 カッパっていやあ、緑色のしめったボディにくちばし、そして頭上に皿で片手に黄桜なんつうイメージがあるみたいだけど、ちっ・ちっ・ちっ。私の見たカッパはちがう。
 あれは3年前。東京は新宿、ご近所にはイラン、ミャンマー、韓国、中国、そしてマトリョーシカみたいな感じの人々があふれかえるエキサイチングストリート・大久保に住んでいたときのことだった。
 夏のその日、私は蒸し暑さのあまり早朝に目を覚まし、パンをかじって麦茶を飲むと、一息ついたところで洗濯機をまわした。脱水が終わって洗濯物をカゴにつめ、排気ガスけむる狭いベランダにこれを干すべしと、足をのばす。部屋は同じくベランダ並みの狭さだ。家具や荷物がごちゃごちゃと置かれていて、ベランダに出るにはベッドにのぼって窓をあけ、サッシに頭をぶつけないよう慎重に、そして雑技団のように体をくねらせなければならなかった。
「よっこいせっと」
 いつものように窓から足を出し、つま先でちゅんちゅんと健康サンダルをまさぐる。左右履きそろえると、天井に手をついて窓枠をくぐりベランダに着地、ベッドのうえの洗濯カゴを両手に持って、えいやとふりかえった。
 と…………。
   
 !!!!!!??????
    

   
 あ、あんた、だれっ???
 エアコンの室外機と手すりの間にはさまるようにして、身の丈は130センチメートル、やせ細って頭は巨大、背中に甲羅を背負った、なんともあやしい2頭身のオッサンが立っているではないか。しかも、丸ハゲである。丸ハゲで、微細な金髪の体毛が、体の全体あちこちにキラキラッと生えているのである。
 キ、キチガイ、現る???
 私は洗濯カゴを取り落としそうになりながら、ごぐっと息を飲んだ。人間、恐ろしいと感じると、悲鳴をあげることも震えることもできないものだ、頭のなかでは「とにかく部屋にもどって110番しなくっちゃ!」という考えが赤色灯のごとくぐるんぐるんとまわっているのだが、まわっているだけで身動きをとることすらできない。
 そのまま、沈黙の数秒間が流れた。
 すると、私の気配を察したのか、そのオッサンがなんの音も超音波も発することなく、文字でいうと「のあああん」という感じで、こちらをふりかえった。
    
 !!!!!!!!!!!!
     

    
 うわあああああっ! ちょ! う! い? あ! ぱーどぅーん???
 研ナオコ似の離れた目もとにブタっ鼻、くちびるは薄く、ベージュの肌はどこもかしこもシワシワで、頭部のところどころから長い金髪がたれさがっている。そしてそしてどういうわけだかどういうわけだか、ど・お・い・う・わ・け・だ・か、BEAMSのロゴ入り白Tシャツのみを着用しているのである!
 だだだだだれよあんただれよあんただれよあんただれよあんた……。
 私は頭が混乱して、念仏のように「エンドレスだれよあんた」を胸のなかで唱えつづけた。するとオッサンは、おそらく私にだけ聞こえるテレパシーのようなものを飛ばして答えた。
    
(かっぱ)
   
 カカカ、カッパ!? まま、またなななななにしてんの、カ、カッパが。うう、うちの、こここ小狭いべべっ、ベランダで。
     
(あいさつ)
     
 そそそそそうですか、どどどうも、はづめまして、いずみと申します。み、み、三重県からやってまいりました。
    
 すると、自称・カッパ、ひょろんと左手を持ち上げると、手のひらをパッと開いてこちらに見せた。あれ? とんでもない見た目に反して、わりと気さくな人のようである。って、のーーーーーーーーーーっ! よく見ると、指の股にはシリコン様の薄い膜が張られているではないかい! カッパ! やはりこいつはカッパなのである! これは水かき、そしてカッパには水かきが常設されているのである!
 自分のイメージとは大幅にちがう姿かたちをしているが、現実にこの目のまえに立っているオッサンの人間とはおもえない風体、背中の甲羅、そしてこの水かき、さらに本人いわく「かっぱ」っつーんだから、やはりこいつこそ、例の、あの、有名な、カッパにちがいない、そう、マジカッパに決定なのである。
 ぐわあああん!
 あまりに突然の出会いに、私はもはや目ン玉ひんむいて非常事態宣言、まもなく泡ふく5秒前、といった境界線で立ちくらみである。が! このチャンスを逃してはならんと必死に観察してみると、なにやらカッパからは青臭くも甘い香りが漂っていることに気づく。果物? いや、野菜……これは夏の風物詩、スイカの香りである。しかし、本人の体は、見たところにおいを発するほど汗っかきには見えず、むしろみずみずしさを失った老人のような肌をしている。ベランダの床には足跡ひとつついていないし、シワだらけの体のどこを探しても、やはり湿り気はないようだった。カッパ乾燥肌説。新しい発見である。
 そうこうしているうちに、カッパはおもむろに手をおろし、私を見たままわずかに口角をあげて笑みをもらした。そして長いまつ毛のみっしり生えた大きな瞳をパチパチッとまばたきさせると
      
(じゃ)
    
 そして、ふたたび、音も超音波も発することなく、ポムッ! カッパは私のまえから姿を消してしまったのであった。
 う、うわあ……写真、お願いすればよかった……。
 しかし、もはや時すでに遅し。私は洗濯カゴを放り投げると携帯電話を手にとり、夢中で友達に出ろ出ろ出やがれっとコールした。受けた友達は大人としてごく正常かつ理性的な反応をみせ、やさしく、そして遠目な感じで「つかれてるのね」と、言った。
 ちがうんだってえええええ、ほんとに見たんだってえええええ!!!!
 信じてもらえなくたって、かまやしない。私だけの、夏の思い出だ。



++2005/05/09(月)  サビキ釣りしたい
 いろいろと、考え事を、してしてしてしてしまくって、そのあと、寝て寝て寝て寝て、寝て、寝て寝て寝て寝て寝まくって。
 そしたら、よくわかんないけど突然だけど、立ち直った。
 アアー、オナカガスイタヨー。ここ1ヵ月ぐらい、へこむ方向へこむ方向にしか物事が考えられなくなっていた。どーでもいいことに悩んで悩んで、悩みすぎて悩みの原因がわからなくなって、悩まなくていいことをわざわざ悩みの種にして、悩んで悩んで、でもこういう時ってやっぱセックスが気持ちいいんだよね、理由は「悩んでるから」。ああ、ごちそーさまッ♪ そしてまたへこんで、おめーも、おめーも、おめーも、おめーも、みんな死んだらいいのに。
 とか思ってるうちに、自分でつくった底なし沼にズゴゴゴゴーッと落ちるんだ。そいで、なんの罪もない通りがかりの人の足首をドロッとつかんで「チ、チョット、アタシノ、ハナシヲ、キイテ……」「きゃああああっ!」
 ……みたいなことやってた。はっ、はずかしいっ。しかも、迷惑っ。エセ貞子。いやーん。
 ああ、防波堤でサビキ釣りしたい。下つきタイプで。竿下で。そして釣った魚は「わあ、釣れたあ♪」と一瞬だけ愛でたのち、どんどん背中にかついだびくに放り投げていって、勝手に圧死してってほしい。(←ほんとに立ち直ってんのか! オイ!)



++2005/05/07(土)  自分にあった歩行スピードで。
 時計を見ながら早歩きで駅へと急ぐなか、「ああ、なんだかこういうのってキャリアウーマンっぽい♪」とかひとりで悦に入っていると、突然、父のことを思い出す。
 
『おい、もくれん、テレビ見ろ!』
 
 もう何年前のことなんだろう、皇室に入られるまえの雅子妃殿下の情報が解禁になって、各所いっせいに報じられたときのこと。当時キャリアウーマンだった雅子妃殿下が颯爽と外務省に入っていくニュース映像を見て、とつぜん父が興奮しはじめた。
 今も昔も私は父との接点があまりなく、「私には話しかけてこない」という寡黙な背中のイメージ以外、人となりというものをほとんど知らない。父は学者をやっていて、大学から帰り食事をすませると書斎に直行、そのまま朝まで姿を見せず要を足す時の扉の開け閉めが存在確認のようなものになっているという期間もしばしばで、家族とのふれあいはほとんどなく、ひとりで閉鎖的な生活をしていることが多かった。
 私にとっては、ちいさい頃の思い出も皆無に近ければ、まともに会話した記憶もないような父。歩み寄ろうにもどう接していいものやらまったくわからず、留守中にこっそり書斎をのぞいてみては、そのタバコ臭さとあまりの本の量に圧倒されて引き返す、そんな日々だった。
 だ・の・に、だ。この日に限ってなぜだか唐突に私に話しかけた父は、面食らう私をよそに猛烈ないきおいで続けてまくしたてた。
 
『おい、おい、もくれん、見とるか? この小和田雅子さんって人、ものすごいスピードで歩いとるぞ! これは時速6キロぐらいで歩いとる! すごいぞ、これは!』
 
 お、お父さん、なぜ娘に久しぶりに、しかもいきなり声をかける際の着眼点が、そこなの!?
 私は、皇太子殿下ご成婚という日本の重大な歴史事情よりも、「父が私に話しかけた、しかも雅子妃殿下『の、歩行速度』というわけのわからない部分で!」という泉水家・父子の歴史における珍珍事件のほうにビックリし、とにかく必死でテレビのなかの父いわく時速6キロ歩行を目に焼きつけるしか方法が浮かばなかった。
『う、うん! ほんとやね、速いね! すすすごいね!』
 動揺したままさぐりさぐりに言葉を返すと、父はなにやら一寸満足した様子を見せた。このまま皇室の話題に花が咲くのか!? と思いきや、父はまたいつものように黙りこくってしまい、それ以降、会話が再開されることはなかった。
(そ、そ、それだけかあ〜ぃ……)
 心のなかでさみしくツッコミを入れながらズッコケてみるも、父はテレビどころか、すでに手元の新聞のほうに夢中、どうも私はひとりで踊らされてしまってた様子なのであった。そらそうだよ、いきなりネタともとれる話題をふられたら、踊っちまうよ、サービス精神旺盛な私は。
   
 ……あれは一体なんだったんだろう。冗談? それとも、たまには娘とコミュニケーションをとろうと、気まぐれにボケを投げてみたんだろうか。だとしたら、私はもっといさぎよくパーンと金属バットで打ち返したほうがよかったんだろうか。よくわからない。父はまだまだ元気で、特に死ぬ予定もなく、今日はいそいそゴルフらしい。よくわからない。
 と、父の話なんか思い出して、母の日とのバランスをとってみたマコトに育ちの良いこんなにも親想いのコンサバ系・わたくしの本日(なにを強調しとんねん)、午後イチ渋谷集合、大学の先輩と4年ぶりぐらいにお会いする。
 本を読んでくださってのことだったので、再会後しばらくの時間、口には出さずとも先輩からは「はっきりいって、あなたに、なんて声をかけてやっていいのかわかりません!」というオーラがバリッバリ伝わってきて感電しかかった。う、うわあ……ですよねえ、旧知の、特に女性の先輩なんかが読んだら、やっぱそう思いますよねえ、あ、あのー……。が、なんとか1時間ぐらい話したあたりでお互いにペースがつかめてきて、気づけば4時間、最後は「いやあ、久しぶりに会えてよかったあ」「ですねえ!」と笑顔でお別れすることができ、私は、こっそり、もんのすごい勢いで、胸をなでおろしたのだった。
 はあ。知人のみなさま、仲良くしてくださあああい!
 にしてもなあ、なんでこう、今さら知人にいちいちびびってしまうのかって、うーーーん、いいのだ。よかないけど。いいのだ。よかねーよ! いいんだよ! ほかならぬ私自身が「ちょっと、読みなさいよおお! そしてまだまだ書かせなさいってばああ!」ってヤル気満載なのは確かなことなんですよ。でもね、やっぱ知人に読まれるとちょっとハラハラしちゃいますよ。そら、当たり前だ。飽きるまでもうしばらく好き勝手に葛藤してたらいいですよ、おバカんぼうのもくれんさん。つーか、だって、やっぱ自信マンマンで知人に買わせてんの、自分なんだし。
 とか思いながら、ミニマムなことにいちいち葛藤してる自分がバカらしくなってきたので、帰りにシネマライズに立ち寄り。「真夜中の弥次さん喜多さん」がちょうど上映時間直前だったので、ふらあと入り、古田新太に一発撃沈される。帰宅。



++2005/05/06(金)  書店探訪のススメ
 朝8時ちょっとまえに起床。8時きっかりにセットされている目覚まし時計がけたたましく鳴りあばれる瞬間を、手に汗にぎり黒目開放、心臓バックバクさせながら待つ。これは確実に命を縮める瞬間であるよおおおと危機を感じたので、鳴る前にセット解除した。私は気がちいさい。
 
 5月6日発売の雑誌「ダ・ヴィンチ」(メディアファクトリー)に、泉美木蘭のインタビューが掲載されてます。見てみるっていうのは、どうでしょう。だめ?



++2005/05/04(水)  テレビのリモコンに愛をこめて
 ひきこもごもにひきこもりがちのゴールデンウイーク。とはいえ、さすがのゴールデンウイーク。イラストレーターのオノダエミさんと数年ぶりに再会、イタリアンなど食したのち、閑静な住宅地と名高い、閑・貧・困としたイズミ邸にて酒飲みながら猫じゃらす。
 久しぶりすぎておのおのに心配な部分があったのだけど、会ってみればお互いに「なんも変わってないやん」、あっというまにむかし話に華が咲き、あの男はなんだこの男はなんだ、えーあの男ってそうなんだっておおはしゃぎの大宴会に。
 しかし、時は流れてるんだなあ……オノダエミさんとはじめてお会いしたとき、私は企画運営会社の社長なんてのをやっていて、スーツ着て黒いビジネスバッグかかえて西新宿の摩天楼を金策のため黄色い折りたたみ式ケッタマシーンで駆けまわっていた。(※て、最近知ったけど『ケッタマシーン』って方言なのね。チャリンコのこと)
 銀行行って〜、断られ。税務署行って〜、怒られて。農協行って〜、意味不明。国民生活金融公庫はやさしかったなああああ。わけわかってなくて目がまわってたような日々のなか、オノダエミさん含むいろいろな人と協力して展示会やってはテレビ局に「だから取材しにきて」とむちゃな営業したり。そんな営業必須ツール、ケッタマシーンのサドルを盗まれかけて、しかしサドルが長すぎて犯人が盗むのを途中であきらめたらしい、という事件もあったなあ。

 ←現場写真。
 こんな、ハンドルより上までひっぱってもぬけないサドルなんて、盗んだところで2次使用できないのである。ちなみに、いずみ使用時は上部のちょっとサビてる部分まで。
 と、まあ、自分の過去をさも美しいものだったように表現するのは、自分のなかで心苦しいボロが大量にあって痛々しいのでそろそろやめといて、オノダエミ、イズミ邸訪問5分でなぜかうちのテレビのリモコンと記念撮影。

   
 理由は、これ。

 
 あかんのかいっ! くっそー、関東勢、ちょっと自分らが全国放送キー局のチャンネルばかり見てるからって……。
 うちの実家ではねえ、1が東海テレビという名のフジテレビ、3がNHK総合、5がCBCで25がテレビ愛知。35は中京テレビで33は三重テレビなの! そしてだ、その後引っ越した大阪では、チャンネルは2・4・6・8・10・12の偶数並び、2がNHK総合で4が毎日テレビ、6がABCで8が関西テレビだったんだっつうの!
 そらあ、あなた、混乱するっしょ。しかもこちとら、すこしでもスタイリッシュなトーキョー・アーバンライフに馴染もうとさ、努力してるわけよ。生活の知恵ガンガンひねりだしてチャンネル表のひとつも貼りつけてみるっちゅうねん。これ、5回ぐらい書き直してようやく“小さいけど文字がつぶれてない”という絶妙のサイズに完成させた逸品よ? これは立派なバリアフリーリモコンですよ、まだサランラップ巻いてないだけマシと思え!!!
 
 しかし、これは新大久保に住んでいたときのチャンネル表であり、引っ越して今度はケーブルテレビになってしまい、このチャンネル表はまったくもって役にたっていないのであった。書き直すか……。



++2005/05/02(月)  カッペ式・母の日のプレゼント選び
 昨日は何の脈絡もなくでめきんの話なんかを書いていたけれど、よく考えたら近々、母の日なんである。母の奇行をネタにしてひとりで腹かかえて笑ってるひまがあったら、贈呈品のひとつでも選べよこのバカチンが! っつう話なんである。
 一昨年はわりとロマンチックに、星に名前をつけて米国国議会図書館に登録するというステラレジストリー
 昨年は、造花じゃないのに香りがつづくと流行になったプリザーブドフラワー
 さて、今回はどうするか。花屋のサイトをのぞくと、去年よりもプリザーブドフラワーのコーナーが大きく展開されているばかりで、まあ、たまに目をひくといえば空気清浄効能があるという光触媒・空気触媒フラワー。ん〜、しかし、こいつは精巧に出来てはいるらしいが、あくまでも造花なのである。しかもだ、まがりなりにも去年は香りのある花を贈っているというのに、その香りを清浄してしまう可能性のある造花を贈るってのも、どうなんだ。
 というわけで、選ぶのもめんどうになり、とりあえず目についた「宮内庁御用達」という言葉にとびつき、ええい、母娘もろとも「雅子さまとおそろいやでえええ!」とでも踊らされてしまえいッと山田平安堂の漆器(地味にお花つき)に決定!   
 やはり、田舎から東京へ出てきたカッペちゃんとしては、「ちょっとでもめずらしいもの」を基準に母へのプレゼントを選びたい! そして、小刻みに小刻みに故郷に錦を飾った気分になっていきたい! しかも案の定「あんれえ、ぷりざあぶどふらわあ? こないなめずらしいもん、うちの田舎には売ってへんわあ。やっぱり東京は洒落たもんが売っとるんやなあ!」と仰天してくれる母がいるということは、田舎人としてなによりも幸せなことなのである。
 
 しかし……よく考えてみれば、プリザーブドフラワーぐらいうちの田舎・三重県にも余裕で売ってる、というのも事実である。「三重県にも、東京の半年遅れで売り出されたかもね」とかなんとかこじつければすむ話ではあったが、さらに一昨年のステラレジストリー、これに至っては、取り扱い会社が大阪なのである。むしろ、三重県から「ちょっと大阪行ってくるわ」程度のノリで簡単に出かけられる場所で売られてたものを、わざわざこちらからネット注文して、さも東京で見つけたレアなもののように贈りつけているのである。
 うーむ、ちょっと前まで「娘は東京でインターネットしてますねん」「おおお、えらいなあ、そら頭のよろしい娘さんでしたでなあ」で、話がまとまっていたというのに、いまや母こそ超ヘビーなネットユーザー、ブログまで立ち上げようかと私にメールで相談してくる始末である。そろそろ、ネット通販という安直な手段に気がつく頃か……。
 というわけで、今回の宮内庁御用達・山田平安堂、これは失態を犯してはならんと、いちおう注文ボタンを押す前に所在地をきっちり確認しておくことにした。東京都渋谷区猿楽町。完璧じゃないかああああ。「東京」の上に「渋谷」ですよ、しかも「猿楽町」ってほら、オサレの街・代官山ってことですよ。こりゃ、もう、大・コーフン!!
 よーし。完璧な「やっぱり東京やわあ選び」である。カッペ根性、満たされり。



++2005/05/01(日)  黄金週間のおひまつぶし1 「THE・でめきんライフ」
 まだぎりぎり物心ついてるかついてないかぐらいの豆つぶだった頃、家族で夏祭りに出かけ、金魚をすくってきた。7〜8匹はいただろうか、急遽台所の一角に設置された水槽のなかで、彼らはぶくぶくぶくぶくイッツ・ア・観賞魚ライフ! をエンジョイしていた かどうかは知らない。
 真っ赤なでめきん、真っ黒なでめきん、赤と黒のまだらなでめきん。でめきんじゃない金魚もいたが、とにかくうちの実家では金魚のことを総じて「でめきん」と呼んでいた。
 
「なあ、このでめきん、目玉飛び出てへんやん」
「でめきんとちゃうからやろ。でめきんでも目玉飛び出てないでめきんもおるんや」
「なあ、でめきんに名前つけんでええの」
「でめきんはでめきんやからでめきんでええやろ」
 
 私たち家族は、それはそれはでめきんに対する差別用語バンバンなイッツ・ア・でめきんライフ! をエンジョイし、それなりにでめきんを無視し、でめきんとともに日々の食卓を囲んで、けっこうでめきんなんかどうでもいい生活を送っていた。
 でめきんの世話は当時、完全主婦だった母が中心に行っていた。母がどんな世話を行っていたのかは知らないが、それが完璧だったのか、それとも夏祭りで捕獲されるほどのでめきんの生命力自体が強かったのか、彼らは私が小学校にあがって卒業、そして中学校に入って脇毛がうずを巻くようになってもまだ、水槽のなかでうろうろ泳いでいた。
 そんなある冬の日だった。記録的な寒波が襲い、私の住んでいた地域ではめずらしいほどの豪雪、ご近所では東北でもないのにはりきって雪下ろしの会(素人部隊)が結成されることとなり、中学も休校となった私はそれを尻目に「さぶいなあ……」と台所で暖かいお茶を飲みながらポンキッキだかウゴウゴルーガだかを見ながら久しぶりの遅い朝を満喫していた。
 人間、いつもならヒイヒイ活動している時間にのんびりテレビなんかを見ていると、ふと所在をなくしてあたりを見回し、みずやに新しいコーヒーカップなどを発見してサプライズ、瞬間的に「いつもの」風景からピラッと視界がひらけるものである。それまでは気にもとめなかったでめきん水槽が急に気になり、ふふんと首をまわした。と。
 
 ・・・・・・・・・!!!!!!??????
 で、ででででめきんが、でめきんが全滅している!?

 
 青みがかった水のなかでガラス面などツンツンパクパクしながらうごめいていたような気のする大勢のでめきんが、赤も黒も赤黒も、でめきんではないでめきんも含めてとにかくすべてのでめきんが、一匹残らずことごとく、腹出して目ん玉にごらせて水面にプカアと浮いているのである。そしてピクリとも動かないのである。
 よく見ると、水面からは、ほんわかほんわか今夜はしゃぶしゃぶっ? てなノリの、のんきな湯気。ていうか、事態はうまく飲み込めないが、どういうわけだかあきらかに、ゆであがっているのである。でめきんが。さもいいあんばいに。
 まじかよ。
「でめっ、でめっ、でめきんがあああああっ! おかーーさーーーーーん! でめきんが、でめきん、でめでめっ、でめきん、でめきんが!」
 私はとりいそぎ奇声をあげ、なんやの、なにごとやの、と二階から駆け下りてきた母に、たいして思い入れもなければ特にどうでもよかったはずのでめきんの惨状をここぞとばかり必死に訴えた。
「うわっ、なんこれ、死んどる? うわっ、死んどる!」
「な!? 死んどるやろ? なあ、これ、ゆであがっとるやろ? これ、ゆでられてるよな? ほら、湯気出てるやん、絶対ゆであがっとるって! ゆであがっとるやろ!?」
「うん……ゆであがっとるわ……」
 私がでめきんの死よりも『ゆであがっている』という仰天の事実に興奮をおぼえてギャアギャアと強調していると、そのテンションとひきかえに、母の顔がみるみる真っ青に変化していく。もしや。私は恐る恐る母の顔をのぞきこみ、たずねた。
「お母さん、なんか……した?」
 ちがうねん! そう小さく叫んですがるような顔を一瞬見せたあと、母は語り出した。朝のあまりの寒さにでめきんが心配になり、水槽に手を当ててその冷たさにおどろいたこと、このままでは水槽内の水が凍ってしまうんじゃないかとドキドキしてなんとか水温を保てないかと思案したこと、そして思いついたのが水槽内にお湯を足すということだったこと、しかし、そのままお湯を足したのでは水が溢れ出てしまうため、3分の2ほど水を抜いてからにしようと思ったこと、そこで、冷たい水が3分の1残っているのだから、少々熱いぐらいの湯を入れるのがちょうどよいと思ったこと、結果、入れたのはまだ笛をピーピー吹いているヤカンの熱湯だったこと。
 ……。
「……それ、入れた瞬間に異変はなかったん?」
「うん。その時はえらい元気にはしゃいでるなあって思って、ホッとしてたんやけど。まさかこんなことになってるやなんて……」
 元気にはしゃいでるって、お母さん、それ、でめきんの断末魔ですから。
 
 その後、母と私はゆであがったでめきんを生ゴミとして処分し「うわっ、くさっ」ぐらいの非道な言葉を投げ散らかしながら水槽を片づけ、そして、あくまでもなかったこととして、シレシレッと私たち一家のでめきんライフを終幕させたのであった。
  
 父と弟がでめきんの不在にようやく気がついたのは、それから一週間も先のことである。
 
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