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++2006/12/18(月) 三度目の正直ってこれかっ!
あれは私になにかを知らせるメッセージだったのかもしれません。
実は、万引きばあちゃんが救急車で護送されていく(12/12の日誌参照)のを目撃した翌日は、愛猫ナポリ君が、深夜、突然に尿が出なくなるという危機的状況に陥り、うわあああ尿管結石だヤバい死んじゃうぞ! と大慌てで深夜の動物救急車ちうやつを呼んでいた。結果、「ぼうこう炎」で注射一本。2万5千円もする治療費を払わされたところだったのだが。
三度目の正直ってこれかっ!
ストレッチャーでギャアギャア搬送されていったばあちゃんのお話を、あれだけダラッダラとここに書いておいて、その直後、私は、ピタリまったく同じ目に遭っていた。別に、万引きしたわけじゃないんだけど。救急車で運ばれた。
ノロだよ、ノロ!! ノロウイルス!!
今朝はいつにもまして胃の調子が悪いなあと思っていたら、午後から吐きっぱなし。もともと胃腸が弱くて日常的によく吐く人間なので、そのうちおさまるだろうと、布団とトイレを往復しつつゲロゲロやっていたら、下痢まではじまり、吐き回数は数え切れないほどに。トイレの床にうずくまるほどの下腹部の激痛、強烈なのどの渇き、最後は口から泡をふいてしまった。ふいたのはじめてなんだけど、泡って黄色いのねー。と思いながらふいていた。
――あかん、死ぬ。
トイレのドアがどかっと開いたかと思うと、部屋のなかには東京消防庁のメットと白衣がわらわら。あわっ、あわわっ、ふいちゃったの、あわあわっふいちゃったのっと涙ながらに訴えているうちに、私の体はすぱぱんっとストレッチャーに乗せられ、毛布で巻き巻きの上、ベルト固定。指先に、たぶん心拍かなんかを測る変なクリップをはさまれて、
「イズミさん、イズミさん? 気持ち悪いね、お腹も痛い? 痛いね、うん、すぐ病院連れてくからね。……えー、昭和52年6月1日生まれ、29歳女性、はげしい腹痛に下痢、嘔吐。血圧はー」
頭のなかには、ドラマ『救命病棟24時』で急患が運ばれてきて進藤先生が「ソウカンだ!」と患者の口にバールのようなものを突っ込んでいるときのBGMが流れつつ、救急車ってすげー揺れるとか、「道を開けて下さい」と放送してる声が女の人だとか、私を見下ろして体温チェックしてる人が蟹江敬三に似てるとか、そう言えば中学生の頃はヘルメットかぶってチャリンコ乗ってたなあとか、なにゆえなのかホントどうでもいいことばかりがグルグルグルグル巡りまくっていた。やがて、つーか、私いまマジであの万引きばあちゃん状態じゃんかあ、っちゅーか、なに救急車で運ばれてんだよお、チョーウケルンダケドーみたいな感じで、今度は自分の状況がものっすごい笑えてきて、全身苦しくってしょうがないのに顔だけがニヤニヤしてしまい、だめだよ、こんな時に笑うなんて不謹慎だよ! 救急車の中だよ!? と、自分が運ばれてるのに、自分に気をつかわなければならないという、そして、笑っているのをごまかすために「うううっ」とうなって顔をゆがませるという、もう、わけのわからないハイテンション状態になってしまってぴーぽーぴーぽーきゅうきゅうしゃあああ〜……。
で、だ。
搬送された病院で出てきた若いドクター。これがひどくて、
「おれ、外科だからよくわからないんですよね」
「流行りのウイルス性のやつだと思うけど、ノロかどうか調べる検査は3万かかるし、おれはもともと外科で、いつもはもっと難しい手術専門だからこういうのはわからないんですよね」
「内科の先生は今いないんですよ。もっと命に関わるような重体の方ならおれでも診れるんですけどね」
「入院するなら個室しかないから高いけどいいですか」
シンジラレナーイ。巻き舌で再度、シンジラレナーイ。
って、てめー、なんのために医者になって救急外来にいるんだよおおおおっ!!
こんな病院にいたら自主的に死ぬ前に殺されちまうので、タクシーに乗り、別の病院へ。車椅子にのっけられて、ベッドへぽいっ。周りは、私とほとんど同じ症状でうなっている患者だらけだった。
症状はばっちり、例のウイルスによる感染性胃腸炎とのこと。二枚貝は食べておらずとも、人から人、人・物・人で簡単に感染してしまう。問題は治療方法。ウイルスを殺す薬は存在しないため、脱水症状を回復させるために水分と吐き気止めの点滴、整腸剤での下痢止め、解熱剤などの対処療法しかないのだという。
オウ、マイ、ドクタ。ではさっそく点滴……といきたいところなのだが、実は私、現在、身体のほかの部分に問題を抱えていて、薬物は一切使用できないという状態なんである。オウ、マイ、ガア。
「なるほど。それじゃ投薬は無理ですね。水分のみの点滴で、脱水症状だけ対処しましょう。脱水は命に関わりますから。あとは我慢してください」
たしかに、半分ぐらい命に関わってたようだ。点滴針を刺すために腕をゴムチューブで絞り上げたのだけど、脱水しすぎて、血管が浮き出てこないんである。ばっちんばっちんひっぱたいても、「あれ、だめね。血管がないわ」。結局、唯一青い筋の見えている肘の内側から刺すことになり、ということは、点滴中に腕を曲げると針も曲がって突き出て漏れちゃうことになるのであり、強制的にピーンと伸ばされたまま、水を点滴されること2日間。
我慢強さには定評があるので、まあ、吐き気と腹痛はそのうち乗り越え、肘からでも水分さえ入ってくればのどの渇きはなくなり、一安心。後半は、寝てるのも暇すぎて片手で携帯いじってメールしまくったり、ミクシーに書き込みしまくったりして過ごしてたのだが、そいでも、ま、胃薬が飲めないのでなかなか胃の調子があがらず、飲み食いすると吐いてしまう感じ。3日目の夕方になって、ようやく、量をセーブすれば吐かなくなった。
そして6日目、ようやっとほぼ回復してパソコンの電源を入れることができたわけなんだけど、久々にメーラーを開いたら、ものっすごい量のウイルスメールがドッサアと届いて、もう、吐くかと思った。
しかし……あの、最初の外科医んとこに入院させられてたら、どんな目に遭ってたんだろ。もうちょい長居して、あの自称・スーパードクターっぷり語録を収集したかった気もする。
んでも、そんなことより、みなさん、ノロまじで怖いよ。使い捨てマスクを一か月分購入しました。
Mokuren Izumi
++2006/12/12(火) ばあちゃんの大立ち回り
このあいだ、駅前のスーパーで万引きして捕まってるばあちゃんを見た。
おそらく80歳ぐらい、普通の人間の半分ぐらいにまるっこく縮んでいて、買い物かごをひきずりながら店内を徘徊していたのだけど、どうやら地下食品売り場で商品をふところにつっこんで、レジを通らずそのまま隣接する駅ビルへの連絡口から出て行こうとした模様。取り囲む女性店員2名は50代、スニーカーにズボンをはいて、目つき鋭く恐らく専門の万引きGメン。ばあちゃんの脇をガッチリかためて、「ゼッテー逃がさねえからな、ババア!」というオーラを出している。
「お客様、ちょっといいですか、お客様」
「……」
「なにかお忘れですよね? お客様」
「ア、ア……」
ばあちゃん、一瞬だけ血の気の引いた顔を見せると、かたくなにうつむいて、一層まるっこくなり、頭を地面に近づけている。二人の女Gメンはますますばあちゃんに近づいて完全ガード、たたみかけていく。
「お時間とらせませんから」
「そうです、少しだけお話ししませんか」
「ここだと寒いですから、奥のお部屋のほうで」
「お茶でも飲みながらね」
「なにもなければ、それでいいんですよ」
怖いよGメン、言い方が。なにもないのにお茶誘うのかよおっつーか、そんなお茶飲めねえっつうんだよ。ばあちゃんは、すっかり球体に近づいて、つっつかれたダンゴ虫みたいになっていた。老人になると前屈に適した背骨を持てるんだなと思った。
「お客様、ちょっと歩けますか」
「さ、お客様」
Gメンも、まだ犯人と確定したわけではないので手荒なマネはできないらしく、ばあちゃんに手を添えることはしていても、無理にひっぱりあげて連行しようとはしない。カチカチに丸まって足一本出さないばあちゃんだったが、やがて、意を決したようで、突然顔をあげると、Gメンのひとりに抱きついてすがった。
「ぐ、ぐるじいい、し、死ぬうう、死ぬううう、救急車呼んでええええ」
え、えええっ……!!
ばあちゃん、大丈夫かよっ。左手でGメンの腕にぶらさがり、完全にもたれかかって、いまにも死にそうな顔、と思いきや、よく見ると、右手が問題。どういうわけか自分の首をぎゅうぎゅうと積極的に絞めつけて、苦しい死ぬ、このままでは首が絞まって死ぬ、だからいますぐ救急車呼んで! とわっけのわからん自殺をはかっているのである。言っていること、むちゃくちゃ。しかし、勢いよく居直ったばあちゃんは強いもんで、まったくもって手加減なし、指の関節が白くなるほど力をこめてはわめくもんだから、Gメン、なんとかその手をふりほどこうと大焦りである。
「死いいいいぬううううううう!!」
「おややややめてくだしゃい、おきゃくしゃま!」
「おちゃくちゃま、おちゃくちゃま、おちゃついて!」
場内、騒然。Gメン、噛みまくり。
私は思わず、ばあちゃんの様子がよく見える向かい側の商品棚に移動して、積みあがる冬物衣料に身を隠しながらしっかり観察体勢に入ってしまった。
「死ぬよおおう、このままじゃワシ、首絞まって死ぬよおおおう!」
「だったら手離して! おちゃくちゃま、おやめになって、手を!」
「死ぬうううう! 救急車呼んでえええ!」
「手をはなッ……ちょっと、ちょっとお、誰かあああッ!」
ばあちゃん、迫力満点。制服の警備員はすっ飛んでくるわ、応援にかけつけた男性店員はすべってこけるわ、てんやわんや。しばらく大立ち回りを演じたばあちゃんだったが、さすがにこりゃちょっとマジで死ぬわと思ったのか、首を握った右手は離したものの、お次は床に正座して、天を拝みながらおいおいと泣き出す始末。不幸なGメンは、いったん安堵しつつばあちゃんを抱え込んで、今度はやさしく説得を試みるのだが……第二の騒ぎ、勃発。
どうやら、後からやってきて、これがばあちゃんの狂言だということがわかっていない誰かが、本当に救急車を呼んでしまったらしいのだ。よくわかんないけど老人が泡吹いてるんです! と大慌ての店員の引率によって、ゴロゴロゴローッとストレッチャー引きながら救急隊員が5名も! 到着。ヘルメットにブーツに作業ズボン、薄いブルーの医療系上着の背中にゃあ、かの紋所、『東・京・消・防・庁』!
まっすます、騒然である。
「この方ですか!」
「い、いや、あの……」
「じゃあまず、ゆっくりストレッチャーに上げて!」
「あ、あの」
必死で状況を説明しようとするGメンをよそに、ばあちゃんは、東京消防庁の的確な判断によってとっとと担ぎ上げられ、オレンジの毛布にまかれた上、ベルトでさくっと固定された。安全第一。するとばあちゃん、これはなりきったもん勝ちと見て、今度は瀕死の病人を演じきっている。
「お名前は?」
「ちがうんです!」
「苦しい……」
「胸? 胸が苦しいんですね?」
「……そう」
「どちら側ですか? 左? 左ですね」
「いや、ちがうんですちがうんです、演技なんです」
「苦しい……」
「左ね。左胸部」
「よし、搬送」
「ちょっと待って、待って、待ってーーーーーー」
その頃パラパラと遠巻きにこの様子を眺めていた野次馬のほとんどは、てっきり、店内で倒れた老人が救急搬送される緊迫の場面だと思い込んでいるらしく、必死で隊員を引きとめようとするGメン2人を、あのオバハンら、こんな時になにやっとんねん、と首をひねって見つめていた。一部始終を見ている私だって、最初は演技だったけど、なんか、もしかしたら、騒いでるうちに本当に血圧が上がって心筋梗塞でも起こしたのかもしれん、と思うようになっていたぐらいだ。
結局、Gメンの懸命な説明によって救急隊員も事の顛末が理解できたらしいのだが、しかし、実際にばあちゃん本人は目の前で「うー死ぬー」と苦しみつづけているわけで、「おおかみ少年」という戒めだってありうる話、果たしてストレッチャーから下ろして退散してしまってもよいものかどうか……。
任務を遂行しなければならぬと判断した救急隊員は、最終的に、こう決断した。
「じゃあ……とりあえずご同行いただけますか。救急車のほうへ。なにもなければ、それでいいんですから」
そして、不幸なGメンは、ばあちゃんと一緒に救急隊員5名に囲まれて、店外へと護送されていってしまったのであった。
先ほどまでばあちゃんが座り込んでいた床には、牛角のキムチと紀文のはんぺんが、ころがっていた。
なにもなければ、いいんですけど。
Mokuren Izumi
++2006/12/11(月) なぜ、なぜ、あなたは……
「hon-nin vol.01」の発売からはや3日なんだけど……。
なんでだろう? 太田出版から見本誌が送られてこなくて、わたしとってもさみしい。著者なのに。第2話書いたのに。誰のところにも送られていないのかな。それとも、わたしのところだけ送られていないのかな。十中八九、後者なんだろうな。どうして! 無名だから? 豪華執筆陣が多数増えたから? 多数の豪華執筆陣から順番に送っているので最も無名度の高い私は最後だから? 多数の豪華執筆陣に送ったために、私のぶんがなくなったから? そうなの? そのとおりなの!?
つうか、そんな妄想してる暇があったら買いに行けよっちゅう話なんである。どっちみち、何冊かまとめ買いしてお世話になっている方に送るつもりであるのだし、とっとと本屋へ行けば済む話なんである。なんだけどおー、なんかあー、やっぱ最初の一冊を手にする瞬間って大切にしたいなーなんて思っててえー、よりにもよって出版社から見本誌もらえなかったから自分で買って読みましたってえー、その満たされなさ具合になんて声かけてやってよいのかってゆうかあー。
と、いうわけで、発売日から私は、朝夕にマンション1階のポストをてくてく見に行ったりとか、インターホンのカメラで意味もなく廊下の様子をのぞいたりとか、誰か来たのでいそいそと応答したらマンション買わないかという勧誘だったりとか、あんまり勧誘がしつこいので「買わないって言ってるでしょ。イヤミですか? 貧乏人に対する羞恥プレイですか? こっちは自分の仕事すら確認できてない忘れられっぷりなのよ!」と言ってみたりとかしてるんだけど、なんかだんだん悲しくなってきたので、もう、送られてこないみたいなので、送られてくるまで意地でも読まねえんだ! 読まずに毎日ホンニン、ホンニンって検索しまくって世間の評判だけ先読みしてやるんだ! チクショ〜ッ!!
ウメヤマさん、一冊、送ってください……。
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